[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 6−20位

さらに続いて、ただしちょっと刻んで6-20位。まずは11-20位まで。

11. サウルの息子

12. スティーブ・ジョブズ

13. 君の名は。

14. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

15. ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

16. われらが背きし者

17. ゴーストバスターズ

18. シング・ストリート 未来へのうた

19. 高慢と偏見とゾンビ

20. ブルックリン

『サウルの息子』は別記事にも書いた通り、やはり自分の中で特別な意味を持つテーマの作品であったわけですが、単にそういう個人的な思い入れだけではなく作品自体の力として非凡なものがあって、「娯楽としての消費物」ではない「映画」というものの存在を改めて魂に刻み込んでくるような作品です。別記事一本で語り尽くせるようなものでもないわけですが、ここでそこに踏み込んでいくといよいよ2017年どころか2020年くらいまでは見えてくる恐れがあるのでやめておくことにします。

『スティーブ・ジョブズ』は例年であればトップ1であっても全く不思議のない大傑作でした。別記事で無駄に高い熱量で書いているように、マイケル・ファスベンダー、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズによる怪獣大決戦は、まさに熱が質量を持って観客席に飛び込んでくるような警戒レベルマックスの火山地帯のような有様でした。同じ俳優が『スロウ・ウェスト』の主演も務めているというのは本当に理解しがたいレベルのテンションの振り幅です。素晴らしい。

『君の名は。』は今だから白状しますが、予告編が本当に肌に合わなくて正直「えー」と思っていたんですが、結果的には本編に完全にやられた映画でした。しかも、予告編で「えー」と思ったフレーバーが全部そのまま本編にもあるにもかかわらず、そのまま根こそぎ持っていかれた感じのやられっぷりです。今でもあの唐突な歌の入りとか、シリーズ物のアニメのオープニングかよっていうような冒頭の新宿のタイムラプスとか、「えー」と思うんですが、それでもやはり大傑作だったと認めざるを得ません。この後に及んで独立記事を立ててないんでこの先も書かない可能性が高いのでここで書いておきますが、初見の際、「サインペンが落下するシーン」で劇場内で「ヒッ」って息を飲む音が響いたのが忘れられなくて。本当に息が止まるというか、下手したら心臓が止まるレベルのあの研ぎ澄まされまくったシーン1つに、この作品の凄まじさが象徴されている気がします。新海誠監督の偏執的とも言いたくなるようなあの細部へのこだわりが明確かつ致命的な「標的」に「『映画的』に正しく」向けられたことで発揮された無双の殺傷力は、アニメーション映画を一つ上の段階に引き上げるだけの偉大な到達点だったと思います。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は今月公開ということでまだ記憶に新しいのですが、その分、ネタバレへの配慮も必要な気がしますので多くは語らずにおきたいと思います。とにかく終盤が素晴らしい映画ですが、一方で、当初予告編に使われていながら最終的にかなりのボリュームがボツになったと思われるギャレス・エドワーズ監督の「初期構想」に準拠したバージョンについても無駄に空想が膨らんでしまうという非常に特殊な位置付けになった作品でした。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』もちょっと新しいのであまり内容には触れない方が良いかと思うのですが、位置付け的には「ハリー・ポッター」シリーズの続編というよりはちょっと違う方向性で、それゆえに諸々の制約から解放されて自由になったJ.K. ローリング作品という感じなので今後にも結構大きな期待を抱いていたりします。「ハリー・ポッター」シリーズは1作ごとに学年1年、という縛りが映画化する上で結構厳しかった面があると思うんですが(それをなんとかこなしたからこそのあのポジションというのもあると思いますが)、ニュート・スキャマンダーを主人公とするこのシリーズにはそういう制約はないわけで、1年を2時間にどう収めるか、みたいなところに費やされていたエネルギーをもっと自由に使えるようになったことで、シリーズがどう発展していくか、というのは興味深いところです。そういう意味で、一作目としては滑り出しは上々だったのではないでしょうか。

『われらが背きし者』はジョン・ル・カレ原作、ユアン・マクレガー主演、助演にステラン・スカルスガルドを配したスパイサスペンスですが、実はもう一人の助演男優であるダミアン・ルイスが実によくて、率直に言って地味なストーリーに小粒のスパイスを効かせてくれている感じです。作品全体としてみればあまりヒットするような要素もないわけですが、ステラン・スカルスガルドが「信義」ということを語る時の説得力であったり、ダミアン・ルイスが一人で過ごす休日、料理に勤しんでいる姿であったり、というようなそれぞれの要素がことごとく個人的なシングルヒットを積み重ねていくような作品でした。まさに全員野球。(野球じゃない。)

『ゴーストバスターズ』は今改めて思い出すとどうしてもクリス・ヘムズワース演じるケビンが脳裏をよぎるというか、むしろ脳内の電飾まみれのステージを大々的に占拠してしまうわけですが、それを振り払ってもう少し思い出すと、クライマックスの殺陣やエンドロールでのホルツマン(ケイト・マッキノン)の勇姿と、敬意と愛情のこもったそれぞれのカメオが魂に力をくれるような気がするわけです。いいゴーストバスターズでした。

『シング・ストリート 未来へのうた』は今年の映画として18位ではあるんですが、ある種のカテゴリにおいてはライフタイム・ベストといっても過言ではないような特殊な位置付けの作品でした。なんというかこう、ある特定の部分が響きまくるというか。Twitterでも書いたような気がしますが、例えば、「午後のわずかばかりの自由な時間、狭い庭に降りる階段に座って1杯のワインを飲みながら新聞を読んでいる母親」の後ろ姿を見つめる「兄弟」というシーンが本当にもうどうしようもなく響きまくってきてたまらないわけです。未だに日常的にサントラを聴いている特別な映画です。あとアイルランド訛りがまた個人的にツボだったり。何なんでしょうね、このアイルランドに対する特殊な感懐は。

『高慢と偏見とゾンビ』は「タイトル一本勝ち」という感はあるのですが、実は意外と破綻していない作りになっていて(褒め言葉なのかどうか微妙ですが)、ちゃんと最後まで楽しく観られるというところが自分の中での高い評価につながった気がします。ダーシー役のサム・ライリーなんかも、ちゃんと本気で「高慢と偏見」をやればコリン・ファースにもさほど引けを取らないのではないかという感じですし(若干贔屓目があるかもしれません)。願わくば製作者の思惑通り、ちゃんと続編が出てきてほしいところですが、あまり期待できそうな気はしないので続きは原作の方で読むことにしようと思います。

『ブルックリン』も上述の『シング・ストリート』同様、アイルランドに対する謎の郷愁のようなものを刺激する作品なのですが、『シング・ストリート』が「アイルランドから出ていくまで」の話であるのに対して、こちらは「アイルランドから出てきてから」話で、それゆえに一層強烈にこの正体不明の「郷愁」もどきを刺激する作りになっているのがポイントでした。というか、日本でも割と「実家から東京に出てきた」ことに起因する固有の精神構造がかなり多くの人の中にあると思うんですが、そこともリンクするんじゃないかという気がしています。そういう人々は大なり小なり、あるいはどこまで意識的にそれをするかによらず、どうしても「実家に対してどういう『判断』をするのか」という話があると思うんですが、それとこの作品のテーマが繋がると、作品自体による情動にブーストがかかるというか。あと、そういう個人的経験に依存するような話はさておいて、「画面のデザイン」という点でもレベルの高い映画だったように思います。作品を通しての「色」の使い方とか、この辺りについては本来なら別記事を立てて掘り下げておくべきところなんですが、とりあえず2016年も残り5時間を切っているのでこの辺で。

続いて6-10位です。

6. キャロル

7. シン・ゴジラ

8. トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

9. サウスポー

10. ザ・ウォーク

『キャロル』は、原作も併せて考えると女性の社会的地位であったり、あるいは現代においてもLGBTにまつわる問題として依然として残っているテーマであったり、色々と真剣に捉えるべきモチーフが中心に据えられている作品なんですが、そういうことをとりあえずさておいて、とにかく耽美的な観点でゲージを振り切ってくるような美しい作品でした。別記事の方では絵について触れていますが、音楽も実に美しくて、一時期は毎日の帰宅時にこのサントラを聴いていたものです。作品が扱っている「問題」をスルーして「美しさ」の方にばかり目を向けるというのも姿勢としてはどうなのかと思う部分もないではないのですが、今作についてはとにかく絵も音楽も美しすぎるのでこれはもう仕方ないということで、社会問題の方は映画を観ていない時に考えてみたいと思います。

『シン・ゴジラ』は今年最大というか、近年でもちょっと記憶にないレベルの「土下座」案件でした。予告編の時点では絶対に、100%の確信を持って「面白くない」と思っていたんですよね。そしてメディアであれ予告編であれ何であれ、事前情報としてその確信をひっくり返してくれるようなポジティブなものは何もなくて。なので、劇場でこれを観たときのインパクトは凄まじくて。その一方、世間でも公開直後からものすごいムーブメントが巻き起こって、それまでに徐々に兆しとして蠢動してきていた2016年の邦画の「大異変」を確定づける作品だったと思います。この作品については他の作品にもまして語るべきところが山ほどありますが、実際のところ世間の方でも散々語られ尽くしている感はあるので今回はそちらに譲っておくことにして、とにかくここでは改めて土下座しておきたいと思います。見くびってて本当に申し訳ありませんでした。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』は個人的には『ヘイル、シーザー!』と対になる、「映画への愛」と「映画を愛する人々」に捧げられるべき作品なんですが、作品自体の素晴らしさに加えてこの作品はまた「ジョン・グッドマン」が素晴らしいんですね。

I’m in this for the money and the pussy!

と高らかに叫びながらバットで窓ガラスを叩き割って事務所にやってきた「赤狩り一派」の手先を追い返すシーンは2016年ベストシーンの最有力候補と言っても差し支えないレベルでした。今年はジョン・グッドマンの年だったなぁ、と改めて思います。

『サウスポー』はジェイク・ギレンホールとフォレスト・ウィティカーの演技力が最高レベルで炸裂する凄まじいボクシング映画なのですが、ボクシング映画としての正統派路線を踏襲しながら、作品の核心となるテーマの部分で非常に強烈なボディブローを叩き込んできた感じの作品でした。主人公であるビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)のファイティング・スタイルに「ディフェンス」が叩き込まれていくというプロットもそうなんですが、親子の間に生まれた軋轢に対してトレーナーであるティック・ウィルズ(フォレスト・ウィティカー)が告げる、

You got to let her go through her thing and not think that thing is your thing.

Then you can deal with life, like that stuff. Life… Boxing, whatever you want.

というセリフの重みというか容赦なさというか。通り一遍のヒューマン・ドラマには踏み込めないレベルの厳しさがあって、完全にやられた作品でした。ある意味『ルーム』に通じるポイントもあると思うのですが、その辺はまた別途。

『ザ・ウォーク』は別記事にも書いた通り、「手汗」どころか「足汗」までかくという未踏のレベルにまで突き抜けた、異次元レベルの強烈体感ムービーでした。ジョゼフ・ゴードン・レヴィットのフランス語訛りの演技も素晴らしかったんですが、とにかくあの「綱渡り」シーンは凄まじくて、いつかVRで体験することがあったら間違いなく身体に異常をきたすであろうレベルの衝撃でした。劇場で観ておいて本当によかったなぁとつくづく思います。作品自体も別記事で書いた通り、実は心の方にも抜かりなく響いてくる名作で、傑作揃いの2016年においてもしっかりベスト10に食い込む実力を備えた、ロバート・ゼメキス監督のマスターピースだったと思います。

***

ということで2016年も本当に差し迫ってきましたが、残すところあと5本となりました。トップ5を抜きにしても随分と充実した、映画的には非常に素晴らしい年だったことがありありと分かりますが、年を適切に閉じるにあたってはやはりあと5本、しっかりカバーしてから臨みたいと思います。

 

 

 

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