[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 1-5位

ということで、数多くの傑作に恵まれた2016年、個人的に最も素晴らしかったトップ5です。1作ずつ、改めて。

5位 『ハドソン川の奇跡』

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実際のところ、2016年、2大「アーロン・エッカートがブレース・フォー・インパクト」映画の一角でもあるのですが、この映画についてはやはり監督のクリント・イーストウッドの底知れなさというか、「地力」のレベルの高さを思い知らされる作品という印象がやはり強く残っています。一大巨編ということでもなく、特に構えたところもなく、さらっと作っているような感覚すらある(上映時間96分という短さ)にもかかわらず、鑑賞後の気分というか、むしろ精神のあり方とでも呼ぶべきレベルのものに強く影響するような作品です。何といっても結びのセリフが素晴らしい。

あと、IMAXで観たときだけ、アーロン・エッカートの白い靴下が見える、ということでIMAXの優位性を世間に知らしめた作品でもありました。あれは尊かった。

4位 クリムゾン・ピーク

CrimsonPeak

別記事でも書いた通り、ギレルモ・デル・トロ監督の「ゴーストに対する優しい眼差し」が全編に滲んだ、ゴシック・ホラーともちょっと一線を画すような独特の世界観を美しいキャスト陣が煌びやかな実像と虚像に同時に現出させた傑作でした。監督自身の趣味性の結晶のような作品なので、トム・ヒドルストンの人気をもってしても一般受けはおそらくしなかったのだと思いますが、こういう作品があってこそのメインストリームという面もあるので、デル・トロ監督には今後もお世話になっていきたいと思います。

3位 オデッセイ

TheMartian

例年であればぶっちぎりのベスト1であっても全く不思議のない、正統派SFのド傑作です。アンディ・ウィアーの「火星の人」の映画化なのですが、原作も素晴らしく、そこから脚色の入った映画もまた劣らず素晴らしくて、一介のSFファンとしては非常に幸せだったわけですが、映画化という観点でのストーリーの脚色の素晴らしさというのはあるにせよ、やはりこの作品については原作の素晴らしさを抜きに語ることはできない気がします。この映画は例えばサントラも素晴らしいわけですが、それも元をたどれば原作にもその根っこがあったりするわけで、この映画については原作未読の方には是非原作の方も読んでもらいたいと思います。

というか単純に、原作付きの映画化作品で、映画化に文句をつける人をほとんど見かけたことがない、というのは、実はこのご時世ではとんでもない偉業なのではないかという気もします。個人的な感覚かも知れませんが、例えば劇中に流れる「スターマン」が呼び起こす感動の瑞々しさとでもいうべきものは、読書の中で得られる感動とはまた少し異なるものであって、そうして生まれた別れイヤーの感動が原作の再読においてまた新しい感覚を生じさせるような、理想的なフィードバックが起きる、そういうナイスな構造ができあがっていたように思います。実に稀有で幸福な体験でした。

2位 スポットライト 世紀のスクープ

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先の記事で今年はリーヴ・シュライバーの当たり年というようなことを書きましたが、これこそがその頂点とも言える作品です。そしてこの作品の真に凄まじいところは、そのリーヴ・シュライバーの頂点に対し、優りこそすれ決して劣るところのない素晴らしい演技を、マイケル・キートンとマーク・ラファロもまたそれぞれ叩き込んできているというところなわけです。別記事で書いたようにこの作品もまた「実話に基づく」作品で、かつ、この作品については、この「実話」のところが異常に重い事件であるという特異性があります。であるにもかかわらず、映画としてのこの作品が、卓越したキャストの演技により、その「質量」において、「事実」に正対しうるレベルに達していること、そしてそれによって観客もまた「適切に」その根源の「事実」に向き合わされるというか、正しく導かれるような形になっているというのが、この作品の一つの真価ではないかと思います。

もちろん、事実を題材にそのテーマを観るものの魂に注入するという側面だけでなく、エンターテイメントとしても異常に高いレベルで完成していて、すでに触れたキャスト陣の演技だけでなく、例えば脚本もキレッキレに研ぎ澄まされていて、なんというか全く隙のない完成度の高い映画でした。これがあっただけでも2016年は素晴らしい映画に恵まれた年だったと言えるような作品です。

そしてそれすらも押さえて本年1位に輝いたのが、こちら。

1位 ちはやふる −上の句−

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でした。もちろん、映画としての完成度とかキャストの演技力や脚本の緻密さといった点でこの作品が例えば『スポットライト』や『オデッセイ』に勝るということではないわけですが、そういう評価基準から逸脱したところで自分がどれだけ「揺さぶられたか」という一点において、この作品はある意味ぶっちぎりのトップ1でした。中身については別記事で書いているので繰り返しませんが、とにかく終盤の三段ロケット構造は自分の心の中のスイートスポットのさらにど真ん中に突き刺さり、貫通した挙句にそのまま体ごと大気圏外にぶっこ抜いていくような、残酷なまでの精密性と苛烈なほどの推進力を持っていたわけです。

私はそもそも「邦画を観ない人」だったわけですが、2016年、この作品がそれを根本的に転換させてしまった感があります。この作品(および『下の句』)と『シン・ゴジラ』と『君の名は。』はそれぞれ何回も劇場に足を運んで繰り返し観たんですが、その結果、「今年1年間、劇場で邦画を観た回数」は「去年までの人生全部で劇場で邦画を観た回数」をはるかに超えることになりました。個人的には今年を機に「日本映画」に対する姿勢が間違いなく変わったわけですが、実のところこれは必ずしも「個人的」な話にとどまらないのではないかという気もしています。巷では今回、自分のランキングで取り上げている作品以外でも、『この世界の片隅に』などこれまでではおよそ考えにくかったような例外的な成功を収めている作品が話題になっているわけで、この調子でいくと邦画がさらに盛り上がり、国外からの映画と相互に市場を刺激しあってさらに映画界全体の隆盛につながるのではないか、という楽観的な想像さえ湧いてきます。

2016年は本当に良い映画に恵まれた1年だったわけですが、その意味ではさらに来年以降により大きな期待を抱かせるという、映画ファンにとっては幸福この上ない年だったという気がします。今年はついにTOHOシネマズ六本木ヒルズの1ヶ月フリーパス(シネマイレージ9000マイル)にも手が届いたわけで、その辺も活用しつつ来年もより一層、映画を楽しんでいこうという新たな決意をもって、2016年の映画の総括としたいと思います。

 

 

 

 

なお、78位は『ザ・ブリザード』でした。ケイシー・アフレックのゆで卵がなければ許してないところですが、それがあるので今年は駄作なし、ということで。

[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 6−20位

さらに続いて、ただしちょっと刻んで6-20位。まずは11-20位まで。

11. サウルの息子

12. スティーブ・ジョブズ

13. 君の名は。

14. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

15. ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

16. われらが背きし者

17. ゴーストバスターズ

18. シング・ストリート 未来へのうた

19. 高慢と偏見とゾンビ

20. ブルックリン

『サウルの息子』は別記事にも書いた通り、やはり自分の中で特別な意味を持つテーマの作品であったわけですが、単にそういう個人的な思い入れだけではなく作品自体の力として非凡なものがあって、「娯楽としての消費物」ではない「映画」というものの存在を改めて魂に刻み込んでくるような作品です。別記事一本で語り尽くせるようなものでもないわけですが、ここでそこに踏み込んでいくといよいよ2017年どころか2020年くらいまでは見えてくる恐れがあるのでやめておくことにします。

『スティーブ・ジョブズ』は例年であればトップ1であっても全く不思議のない大傑作でした。別記事で無駄に高い熱量で書いているように、マイケル・ファスベンダー、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズによる怪獣大決戦は、まさに熱が質量を持って観客席に飛び込んでくるような警戒レベルマックスの火山地帯のような有様でした。同じ俳優が『スロウ・ウェスト』の主演も務めているというのは本当に理解しがたいレベルのテンションの振り幅です。素晴らしい。

『君の名は。』は今だから白状しますが、予告編が本当に肌に合わなくて正直「えー」と思っていたんですが、結果的には本編に完全にやられた映画でした。しかも、予告編で「えー」と思ったフレーバーが全部そのまま本編にもあるにもかかわらず、そのまま根こそぎ持っていかれた感じのやられっぷりです。今でもあの唐突な歌の入りとか、シリーズ物のアニメのオープニングかよっていうような冒頭の新宿のタイムラプスとか、「えー」と思うんですが、それでもやはり大傑作だったと認めざるを得ません。この後に及んで独立記事を立ててないんでこの先も書かない可能性が高いのでここで書いておきますが、初見の際、「サインペンが落下するシーン」で劇場内で「ヒッ」って息を飲む音が響いたのが忘れられなくて。本当に息が止まるというか、下手したら心臓が止まるレベルのあの研ぎ澄まされまくったシーン1つに、この作品の凄まじさが象徴されている気がします。新海誠監督の偏執的とも言いたくなるようなあの細部へのこだわりが明確かつ致命的な「標的」に「『映画的』に正しく」向けられたことで発揮された無双の殺傷力は、アニメーション映画を一つ上の段階に引き上げるだけの偉大な到達点だったと思います。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は今月公開ということでまだ記憶に新しいのですが、その分、ネタバレへの配慮も必要な気がしますので多くは語らずにおきたいと思います。とにかく終盤が素晴らしい映画ですが、一方で、当初予告編に使われていながら最終的にかなりのボリュームがボツになったと思われるギャレス・エドワーズ監督の「初期構想」に準拠したバージョンについても無駄に空想が膨らんでしまうという非常に特殊な位置付けになった作品でした。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』もちょっと新しいのであまり内容には触れない方が良いかと思うのですが、位置付け的には「ハリー・ポッター」シリーズの続編というよりはちょっと違う方向性で、それゆえに諸々の制約から解放されて自由になったJ.K. ローリング作品という感じなので今後にも結構大きな期待を抱いていたりします。「ハリー・ポッター」シリーズは1作ごとに学年1年、という縛りが映画化する上で結構厳しかった面があると思うんですが(それをなんとかこなしたからこそのあのポジションというのもあると思いますが)、ニュート・スキャマンダーを主人公とするこのシリーズにはそういう制約はないわけで、1年を2時間にどう収めるか、みたいなところに費やされていたエネルギーをもっと自由に使えるようになったことで、シリーズがどう発展していくか、というのは興味深いところです。そういう意味で、一作目としては滑り出しは上々だったのではないでしょうか。

『われらが背きし者』はジョン・ル・カレ原作、ユアン・マクレガー主演、助演にステラン・スカルスガルドを配したスパイサスペンスですが、実はもう一人の助演男優であるダミアン・ルイスが実によくて、率直に言って地味なストーリーに小粒のスパイスを効かせてくれている感じです。作品全体としてみればあまりヒットするような要素もないわけですが、ステラン・スカルスガルドが「信義」ということを語る時の説得力であったり、ダミアン・ルイスが一人で過ごす休日、料理に勤しんでいる姿であったり、というようなそれぞれの要素がことごとく個人的なシングルヒットを積み重ねていくような作品でした。まさに全員野球。(野球じゃない。)

『ゴーストバスターズ』は今改めて思い出すとどうしてもクリス・ヘムズワース演じるケビンが脳裏をよぎるというか、むしろ脳内の電飾まみれのステージを大々的に占拠してしまうわけですが、それを振り払ってもう少し思い出すと、クライマックスの殺陣やエンドロールでのホルツマン(ケイト・マッキノン)の勇姿と、敬意と愛情のこもったそれぞれのカメオが魂に力をくれるような気がするわけです。いいゴーストバスターズでした。

『シング・ストリート 未来へのうた』は今年の映画として18位ではあるんですが、ある種のカテゴリにおいてはライフタイム・ベストといっても過言ではないような特殊な位置付けの作品でした。なんというかこう、ある特定の部分が響きまくるというか。Twitterでも書いたような気がしますが、例えば、「午後のわずかばかりの自由な時間、狭い庭に降りる階段に座って1杯のワインを飲みながら新聞を読んでいる母親」の後ろ姿を見つめる「兄弟」というシーンが本当にもうどうしようもなく響きまくってきてたまらないわけです。未だに日常的にサントラを聴いている特別な映画です。あとアイルランド訛りがまた個人的にツボだったり。何なんでしょうね、このアイルランドに対する特殊な感懐は。

『高慢と偏見とゾンビ』は「タイトル一本勝ち」という感はあるのですが、実は意外と破綻していない作りになっていて(褒め言葉なのかどうか微妙ですが)、ちゃんと最後まで楽しく観られるというところが自分の中での高い評価につながった気がします。ダーシー役のサム・ライリーなんかも、ちゃんと本気で「高慢と偏見」をやればコリン・ファースにもさほど引けを取らないのではないかという感じですし(若干贔屓目があるかもしれません)。願わくば製作者の思惑通り、ちゃんと続編が出てきてほしいところですが、あまり期待できそうな気はしないので続きは原作の方で読むことにしようと思います。

『ブルックリン』も上述の『シング・ストリート』同様、アイルランドに対する謎の郷愁のようなものを刺激する作品なのですが、『シング・ストリート』が「アイルランドから出ていくまで」の話であるのに対して、こちらは「アイルランドから出てきてから」話で、それゆえに一層強烈にこの正体不明の「郷愁」もどきを刺激する作りになっているのがポイントでした。というか、日本でも割と「実家から東京に出てきた」ことに起因する固有の精神構造がかなり多くの人の中にあると思うんですが、そこともリンクするんじゃないかという気がしています。そういう人々は大なり小なり、あるいはどこまで意識的にそれをするかによらず、どうしても「実家に対してどういう『判断』をするのか」という話があると思うんですが、それとこの作品のテーマが繋がると、作品自体による情動にブーストがかかるというか。あと、そういう個人的経験に依存するような話はさておいて、「画面のデザイン」という点でもレベルの高い映画だったように思います。作品を通しての「色」の使い方とか、この辺りについては本来なら別記事を立てて掘り下げておくべきところなんですが、とりあえず2016年も残り5時間を切っているのでこの辺で。

続いて6-10位です。

6. キャロル

7. シン・ゴジラ

8. トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

9. サウスポー

10. ザ・ウォーク

『キャロル』は、原作も併せて考えると女性の社会的地位であったり、あるいは現代においてもLGBTにまつわる問題として依然として残っているテーマであったり、色々と真剣に捉えるべきモチーフが中心に据えられている作品なんですが、そういうことをとりあえずさておいて、とにかく耽美的な観点でゲージを振り切ってくるような美しい作品でした。別記事の方では絵について触れていますが、音楽も実に美しくて、一時期は毎日の帰宅時にこのサントラを聴いていたものです。作品が扱っている「問題」をスルーして「美しさ」の方にばかり目を向けるというのも姿勢としてはどうなのかと思う部分もないではないのですが、今作についてはとにかく絵も音楽も美しすぎるのでこれはもう仕方ないということで、社会問題の方は映画を観ていない時に考えてみたいと思います。

『シン・ゴジラ』は今年最大というか、近年でもちょっと記憶にないレベルの「土下座」案件でした。予告編の時点では絶対に、100%の確信を持って「面白くない」と思っていたんですよね。そしてメディアであれ予告編であれ何であれ、事前情報としてその確信をひっくり返してくれるようなポジティブなものは何もなくて。なので、劇場でこれを観たときのインパクトは凄まじくて。その一方、世間でも公開直後からものすごいムーブメントが巻き起こって、それまでに徐々に兆しとして蠢動してきていた2016年の邦画の「大異変」を確定づける作品だったと思います。この作品については他の作品にもまして語るべきところが山ほどありますが、実際のところ世間の方でも散々語られ尽くしている感はあるので今回はそちらに譲っておくことにして、とにかくここでは改めて土下座しておきたいと思います。見くびってて本当に申し訳ありませんでした。

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』は個人的には『ヘイル、シーザー!』と対になる、「映画への愛」と「映画を愛する人々」に捧げられるべき作品なんですが、作品自体の素晴らしさに加えてこの作品はまた「ジョン・グッドマン」が素晴らしいんですね。

I’m in this for the money and the pussy!

と高らかに叫びながらバットで窓ガラスを叩き割って事務所にやってきた「赤狩り一派」の手先を追い返すシーンは2016年ベストシーンの最有力候補と言っても差し支えないレベルでした。今年はジョン・グッドマンの年だったなぁ、と改めて思います。

『サウスポー』はジェイク・ギレンホールとフォレスト・ウィティカーの演技力が最高レベルで炸裂する凄まじいボクシング映画なのですが、ボクシング映画としての正統派路線を踏襲しながら、作品の核心となるテーマの部分で非常に強烈なボディブローを叩き込んできた感じの作品でした。主人公であるビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)のファイティング・スタイルに「ディフェンス」が叩き込まれていくというプロットもそうなんですが、親子の間に生まれた軋轢に対してトレーナーであるティック・ウィルズ(フォレスト・ウィティカー)が告げる、

You got to let her go through her thing and not think that thing is your thing.

Then you can deal with life, like that stuff. Life… Boxing, whatever you want.

というセリフの重みというか容赦なさというか。通り一遍のヒューマン・ドラマには踏み込めないレベルの厳しさがあって、完全にやられた作品でした。ある意味『ルーム』に通じるポイントもあると思うのですが、その辺はまた別途。

『ザ・ウォーク』は別記事にも書いた通り、「手汗」どころか「足汗」までかくという未踏のレベルにまで突き抜けた、異次元レベルの強烈体感ムービーでした。ジョゼフ・ゴードン・レヴィットのフランス語訛りの演技も素晴らしかったんですが、とにかくあの「綱渡り」シーンは凄まじくて、いつかVRで体験することがあったら間違いなく身体に異常をきたすであろうレベルの衝撃でした。劇場で観ておいて本当によかったなぁとつくづく思います。作品自体も別記事で書いた通り、実は心の方にも抜かりなく響いてくる名作で、傑作揃いの2016年においてもしっかりベスト10に食い込む実力を備えた、ロバート・ゼメキス監督のマスターピースだったと思います。

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ということで2016年も本当に差し迫ってきましたが、残すところあと5本となりました。トップ5を抜きにしても随分と充実した、映画的には非常に素晴らしい年だったことがありありと分かりますが、年を適切に閉じるにあたってはやはりあと5本、しっかりカバーしてから臨みたいと思います。

 

 

 

[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 21−40位

続いて21-40位、まずは31-40位まで。

31. レヴェナント: 蘇りし者

32. 黄金のアデーレ 名画の帰還

33. リリーのすべて

34. ヘイル、シーザー!

35. アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち

36. ある天文学者の恋文

37. アメリカ・ワイルド

38. デッド・プール

39. ズートピア

40. 二ツ星の料理人

『レヴェナント: 蘇りし者』はアカデミー賞の監督賞・主演男優賞・撮影賞に加えて、2016年のクマ・ムービー・オブ・ザ・イヤーに燦然と輝く大傑作ですが、別記事にも書いた通り、個人的な感覚では映画として観たときには叙事的な方向性に触れている感があってこの位置づけです。あんまり乱暴な言い方をするのもよくないんですが、端的にいうと「ストーリーではない」というか。この辺りは今後も自分の中でのテーマになる部分ではないかと思っています。

『黄金のアデーレ 名画の帰還』は個人的には大好物という感じの映画なのでもっと上の順位でもいいくらいなのですが、「ナチスに奪われた芸術品を取り返す」映画ということで今後も自分史上の最上位に残り続けることは間違いないと思います。映画というものが描ける真実というのは、それこそ一つ上の『レヴェナント』のように「生きる」「死ぬ」というレベルのものもあれば、この映画のように個人の生き死にには影響のない、生物にとっての余剰物というレベルでの「価値」というものまで幅広くあるわけですが、後者のように「いざとなれば捨てられるもの」「でもどうしても捨てたくはないもの」みたいなところに、自分自身のスイートスポットがあるんだなぁ、と、この31位と32位の並びを見て改めて思います。完成度や興行収入だけで言えば本来、並ぶような二作品じゃないわけで。

『リリーのすべて』については別記事で結構しっかり書いていてもう付け足すべき話はないのですが、あえていうならやはり監督はトビー・フーパーではなくトム・フーパーだ、ということを自戒を込めてもう一度書き留めておきたいと思います。

『ヘイル、シーザー!』はなんと公式サイトがすでに消えているという状態なのですが、これはちょっとちゃんと取り上げておかなければいけない大傑作でした。ジョージ・クルーニーが、スカーレット・ヨハンソンが、そしてチャニング・テイタムが輝きまくっている、というばかりでなく、オールデン・エアエンライクという伏兵がレイフ・ファインズ相手に一歩も引かない世紀の名演を見せているということで、ちょっと特別に画像も貼って記念しておきたいと思います。

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作品自体が1950年代のハリウッドを舞台に高らかに歌い上げた映画讃歌というか、あるいはそうした映画に捧げられた多くの人々の「愛情」へのトリビュートという感じなのですが、コーエン兄弟はさすがにその辺を綺麗なラインにまとめあげていて「嫌ではないけど鼻につく」というか、愛すべき脂っこさというか、意図的なやりすぎ感が素晴らしかったです。いい映画だったなぁ。

『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』は第二次世界大戦時のナチスドイツの戦犯の中でも最後にして最大の大物であったアドルフ・アイヒマンの裁判のテレビ中継に挑んだチームの話ということで、今年はすでに触れた『帰ってきたヒトラー』や間接的に関わりのある『黄金のアデーレ』、それにこの後出てくる『サウルの息子』も合わせて「ナチスドイツもの」の一角を占めているわけですが、やはりこのグループは重いというか何というか、他の映画とフラットに並べるのが難しいところがあります。しかし、そういうのを一旦とりあえず避けて考えると、この映画については国内ではマーティン・フリーマンを前面に出して売り出されていたような気がするんですが、実際にはアンソニー・ラパリアが素晴らしい演技をしている傑作だったりします。ナチスドイツによる戦争犯罪という超弩級のテーマに飲み込まれず、信念の人と、その信念と現実の交点というか、激突というか何というか、そういう「映画としてのモチーフ」がしっかりと描かれていたというところを個人的に評価してのこのポジションです。

『ある天文学者の恋文』はジュゼッペ・トルナトーレとジェレミー・アイアンズが、何というか非常に身勝手かつ甘っちょろい男のナルシスティックな幻想を好き放題に描いているという点で、前述の『追憶の森』や、あるいは新海誠の過去作に通じるものがあると思うんですが、ジェレミー・アイアンズと劇中の美しい風景の加点でこの位置です。本来、「ダメだよね、こういうのね。甘いよね。許されんよね」という作品なのは間違いないんですが。

『アメリカ・ワイルド』はこれはちょっと他と毛色が違うのですが、アメリカの国立公園の「絶景」という言葉でも生ぬるいほどの「大絶景」の映像を集めた記録映画的な作品です。『シビル・ウォー』のIMAX上映の際に予告編を見て度肝を抜かれてしまい、これは必見ということで帰省にかこつけて北九州のスペースワールドにある最大クラスのIMAXスクリーンで観てきたものです。施設はすでにもう限界に近く(スペースワールド自体、来年で閉園予定とのこと)、夏だというのに空調は故障(しかも「修理の予定不明」)していてスクリーンは傷と汚れでボロボロ、さらに投射のピントも合っていないという、有り体に言って「劣悪」な環境での完勝だったのですが、それでも作品は最高でした。純粋なコンテンツ力というか映像力というか。個人的には創作者の作為が自然物に勝てないようではいかんと思う方なんですが、そういう個人的な信条を圧倒するレベルの自然がそこにありました。これはいつか機会があれば、別の環境で再見したいと思っています。

『デッドプール』は単純明快な娯楽作なようでいて、本来扱いの難しい「第四の壁を超えてくる異色なアメコミヒーロー」という素材を扱うにあたって意外と巧妙な作りになっていたりする抜け目のない作品なのですが、こういう展開ができるのが20世紀フォックスの立ち位置の面白さなのかもしれません。MCUの方でも『アントマン』みたいな作品はあるものの、フランチャイズとして巨艦化しすぎた感があってあちらは逆に今後どこかで行き詰まるんじゃないかという不吉な予感があるわけですが、X-MENシリーズがぶっちゃけ大成功とは言いがたい状態にあるフォックスにはこの路線が活路になっていく気がします。だからファンタスティック・フォーとかでこけてないでもっとちゃんと考えればいいと思うわけです。(上から目線)

『ズートピア』は間違いなく今年一番笑った映画でした。というか、フラッシュのくだり。あそこはちょっと記憶にない、凶悪ともいうべきレベルで笑わされたわけですが、笑ってばかりもいられないというか。別記事にも書きましたが、今作に代表されるような「プリンセスものではないディズニー」は今後、ものすごく強力な「脅威」になっていくのではないかという気がしています。脅威というのはちょっと言葉が悪いのですが、何というか既存のもろもろに対しての破壊的なポテンシャルを秘めた新興勢力という意味では、少なくとも油断をしていてはいけないだろうな、というか。もちろん鑑賞者の立場としてはそういうのも全部大歓迎で色々競合しながら相互発展していくのがベストシナリオな訳ですが。今後に注目です。

『二ツ星の料理人』はブラッドリー・クーパーがミシュランの星三つを目指す料理人を演じた作品なのですが、原題の方の『Burnt』という言葉がより端的に表しているように、執念というか妄執に取り憑かれた主人公が周囲を焼き払いかねないレベルで燃え上がり、やがて火が消え、そして、というストーリーで実はスポ根ものというか、ボクシング映画的なジャンルの話です。その観点では実に誠実でストレートな作りになっているので結構人にもオススメしやすい良作だったりもするのですが、個人的には「マルチアクセントタレント」として最近メキメキと立ち位置を確立しつつあるダニエル・ブリュールが最高でした。今作ではフランス訛りです。

 

続いて21-30位。このあたりはもう上位作ですね。

21. バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

22. 写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと

23. マジカル・ガール

24. シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

25. ルーム

26. セルフ/レス 覚醒した記憶

27. マネーモンスター

28. ヘイトフル・エイト

29. アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

30. ちはやふる ー下の句ー

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は別記事の方に色々書きましたが、突き詰めると「近年稀に見るレベルの最高の予告編(ワンダーウーマンの)であり、かつ予告編がその後の本編より優れている可能性が非常に高い」という感じでしょうか。

『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』も、これまた別記事で割としっかり書いているのでここでは繰り返しませんが、やはり自分自身、趣味で写真を撮っている身としてはより一層心に迫るものがあるというか。観た後で写真が撮りたくなる作品というのはやはりいいものです。

『マジカル・ガール』は今年一番、致命的な映画でした。別記事に書いた通り、完全に不意打ちで食らってしまったので本当にとんでもない衝撃を受けたわけですが、それは当然ながら制作者が意図した「攻撃」であって、その直撃を受けたというのは鑑賞者としては本懐というか何ら悔いるところのない非常に真っ当な体験だったと思います。実際のところ、こういう衝撃についてはどうなのよ、という気もしなくもないのですが、映画というものを2時間前後の体験としてデザインする、という考え方に立脚するなら本作はやはり傑作の一つと呼んで差し支えないと思います。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』も非常に楽しめた傑作なので本来ならもっと上でもいいはずの作品なんですが今年の豊作ぶりにおいては20位にも入れないという異常事態です。MCUの現状は、一作あたり2時間程度で完結して、それ単体でも楽しめつつ他作品と整合し、その上、そこから入ってくる新規参入もある程度はカバーしなければならないという、映画製作という営みが本来想定していたスコープをはるかに超えたところでの複雑かつ高難度なミッションに成功しなければならなくなっているわけですが、それをちゃんと及第点超えて安定供給し続けているマーベル・スタジオの凄みというのはやはり特筆に値すると改めて思います。作品自体については別記事の方で。

『ルーム』も凄まじい傑作でした。これについては衝撃のあまり筆が滑りまくった記憶がありますが、今読み返してみるとやはり他よりはるかに長い文章になってしまっていますね。もう付け足すところもないので、名作だったなぁ、というところであとは割愛。

『セルフ/レス 覚醒した記憶』は今改めて思うと何でこんな位置に来てるんだっけ、という感じなのですが、単にベン・キングズレーがよかったとかマシュー・グードいいよね、とかいうところを超えて、作品のテーマの扱いにおいて琴線に触れるものがあったということだったはず…今ちょっと明確に思い出せませんが、薄ぼんやりした記憶をたどって考えるに、変にアクションシーン入れずに興収とかの色気も出さずにストイックに作ってもよかったんじゃないかという気がしてくるので多分そういうポテンシャルのある映画だったのでしょう。もう一回観ないといけないですね、これ。

『マネーモンスター』はジョディ・フォスター監督、ジョージ・クルーニー主演、ジュリア・ロバーツ助演というスーパービッグネームが、その経歴と名声から自ずと生まれるキラキラした輝きを一切排除してソリッドにまとめあげたリアルタイム・シチュエーション・サスペンスで、予告編の段階から期待感マックスだったわけですが、それに違わぬ傑作でした。そもそも「ジョージ・クルーニーがホストする番組が生中継の最中に乗っ取られる」というプロットの時点でもうそれは面白いだろうという話なわけですが、ジョージ・クルーニーの「自分に何が期待されているか」ということのわきまえっぷりが素晴らしくて、作品を単に「プロットの勝利」というところを超えたレベルに引き上げています。この辺は多分にジョディ・フォスターの才覚というのもあるんだと思いますが、ちょっとこの先も長いのでここではこの辺で。

『ヘイトフル・エイト』は、作品自体については『ルーム』同様、筆が走りまくったケースなので別記事の方でカバーされているものとして割愛しますが、今年一年を通じて、ある意味で「基準」となった作品でした。リアルタイムでランキングを更新していくにあたって、「この作品は『ヘイトフル・エイト』より上か下か」みたいな判断が習慣化していたんですがそういう意味でも自分の中で非常に安定した位置付けの作品だったということなんでしょうね。

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、何はなくとも「ビジュアルの美しさ」ということだけでも非常に高く評価したい作品です。というと逆にマイナスに聞こえるような気がしなくもないですが、ティム・バートン×ディズニーという組み合わせでどれだけの絵が作れるか、というのはやはり作品の価値として他の部分に勝るとも劣らない重要なポイントとなりうるわけです。加えて、やはりプロット的にもキャスト的にも隙がないというか卒がないというか、ちゃんと手堅く作ってあるわけで、こういう作品をちゃんと世に送り出し続けてくれる、というところに、ディズニーの偉大さというものがあるような気がします。いい作品だったなぁ。

『ちはやふる ー下の句ー』は、あくまで『上の句』を受けての『下の句』だと思うので単独で語るのも、という気はするのですが、あえていうならやはりクイーン若宮詩暢を演じた松岡茉優は尊い、というところでしょうか。クイーンとしての存在そのものの説得力が完璧でした。

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ということで、21位から40位まで。既に相当数の傑作が含まれていますが、真の傑作はさらにこの後です。おそるべし、2016年。

 

 

 

 

 

 

[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 41−60位

続いて41位から60位、まずは51-60位から。

51. X-ミッション

52. ロスト・バケーション

53. スーサイド・スクワッド

54. X-MEN: アポカリプス

55. エージェント・ウルトラ

56. インディペンデンス・デイ: リサージェンス

57. ブリッジ・オブ・スパイ

58. ブラック・スキャンダル

59. ウォークラフト

60. エンド・オブ・キングダム

『X-ミッション』はもう本当に「オザキ・エイト」に尽きる映画なんですが、プロットだのキャストだの何だのについて言及するような余力が残らないほどに圧倒的な「絵」と「エクストリーム・スポーツのエクストリームっぷり」が他のゲージまでまとめて振り切るような作品でもあり、もはや映画として評価することの意味自体が薄れてしまっています。6階建てのビルよりも高い波が荒れ狂う海原で、よっしゃ、とばかりにサーフボードに乗っかってクロールしていく人間たちを目にする、というのはそんじょそこらの宗教や哲学では説明できない、深刻なレベルの「業の深さ」の結晶をダイレクトに脳髄に叩き込まれる感があるわけで、なんというか人間は救えねえなぁ、みたいな気持ちになる作品でした。

『ロスト・バケーション』は最近、爛熟というか、もう手もつけられないレベルで拡大しているサメ映画の中で、久しぶりに良心の指針を示すかのような正統派のサメ映画でした。主演のブレイク・ライブリーの熱演もあって非常に手堅くまとまっていて素晴らしいんですが、その一方、正統派ということではやはり「オリジンの壁」みたいなものがあって、サメ映画の宿業みたいなものについて考えさせられる作品でもあります。ひょっとしてサメ映画というジャンルは幻なのではないか、『ジョーズ』一本でそれはもう完結しているのではないか、というこの根源的な問いに、我々が想定しない回答があるのか。今後のこのジャンルにはさらなる注目が必要です。(多分)

『スーサイド・スクワッド』は主演マーゴット・ロビー、戦犯ウィル・スミスによる「こんなんどうやっても傑作になるだろ」という事前の期待を「この手があったか」というがっかりに落とし込んだ非常に罪深い作品でした。それでも順位をこれより落とせないほどに、このネタが好みすぎるわけですが、それにしてもなぁ…予告編の段階でもぜんぜん期待したままだったのになぁ…

『X-MEN: アポカリプス』は端的に言うと

  • クイックシルバーの活躍シーンが素晴らしい
  • だめろん何やってんの
  • ふぁすべん何やってんの

と言う映画で、その3点のみにおいてこの順位という作品です。他にもっとあればもっと上に行けたのに、クイックシルバー除いて一番カタルシスのあるシーンが冒頭のピラミッド崩壊ってのはダメだろう、という。

『エージェント・ウルトラ』はMKウルトラとかその方面が好きな人にとってはヨダレものの作品でもあるんですが、ジェシー・アイゼンバーグがスプーンで人を殺すのが好きだという人にとっても完全にスイートスポットを突いてくる映画です。個人的にはラブストーリーとしての側面を見て行った時のクライマックスも結構気に入っていて、自分がどのカテゴリにいるのかということを改めて自覚させられた映画でもありました。この立ち位置には今後も定期的に回帰したいものです。

『インディペンデンス・デイ: リサージェンス』は今思い返しても何でこの順位なのかよく分からない作品なんですが、何でしょうね。何が気に入ったのか。これが『ブリッジ・オブ・スパイ』より上で本当にいいのだろうか、という疑念が一秒ごとに心の中に充満してきつつあるのですが、とりあえず今改めて見てみたら邦題は「インデペンデンス・デイ」だったのに気づきました。インディペンデンスじゃないんですね。あと噂ではウィル・スミスはこれに出るか『スーサイド・スクワッド』に出るかで迷っていたみたいな話があるんですが、どうせならこっちに出ておいてくれればよかったのに、と切に思います。

『ブリッジ・オブ・スパイ』は一個前とは逆の意味でなぜこの位置にあるのか我ながら釈然としない作品ですが、この後に及んで順位づけを再考しようとすると間違いなく年をまたいでしまうのでさしあたりこのままで。トム・ハンクス、マーク・ライランスの名演が未だに記憶に鮮やかな傑作です。特にマーク・ライランス演じるスパイ、ルドルフ・アベルの「Would it help?」は使い勝手のいい名台詞なので、今後も積極的に活用していきたいと思っています。

『ブラック・スキャンダル』もこんなに下の方に埋もれてていい作品じゃないんですが、感じたことは概ね過去記事の方に書いているのでそこに譲るとして、改めて追記するなら、映画という鏡に映っている現実の社会というものに対する視点、というポイントでしょうか。昨年からずっと「実話に基づく作品」というものについてあれこれと考えているんですが、映画としてそれはどうあるべきか、というところだけでなく、そこから遡って「実話の方が生まれた現実」というものを考えた時に、直接の社会問題としてそれを捉えるある種「真面目」な姿勢だけでなく、そこに「関心」を覚える「興味本位」の姿勢があると思うんですが、その後者について、少し肯定的にそれを受け入れていいんじゃないかという内心の動きが出てきています。この作品についても「ギャング」という要素のさらに向こうに「移民社会」という構造があり、その「移民」というムーブメントの向こうにヨーロッパ側の社会情勢やキリスト教的な文化構造があって、それはまた例えば別の映画とも地続きなわけで、この辺りが本当に面白いというか、趣味・娯楽としての歴史というところと接続して展開していきそうな感じで非常に危険な可能性がチラ見えしている状況です。この辺りは来年も引き続きフォローアップしていきたいと思います。

『ウォークラフト』は封切り日に六本木で観たんですが、やはりその時の劇場のメンツの特異さが忘れられないという点で、非常に興味深い「経験」でした。ダンカン・ジョーンズということで期待していた部分は正直、さほど報われなかった感じもあるのですが、その辺りも含めた「体験」としてこの位置、という感じです。

『エンド・オブ・キングダム』は前作でのホワイトハウスに引き続いてジェラルド・バトラーの二の腕とアーロン・エッカートの顎とモーガン・フリーマンの白髪を舞台にキングダムがエンドするという作品で、今年の二大「エッカートがブレース・フォー・インパクト」映画の一本でもあります。観るものの苦笑交じりの賞賛を誘う「お前何やってんだよ」的な長回しも印象的ですし、「Marine-1 out of flare, Marine-2, prepare to sacrifice」も声に出して言いたいセリフ2016年の大賞候補ですし、もっと上でもいいような気がするんですが、とりあえずこの位置で。それにしても『ホワイトハウス・ダウン』の副大統領がモーガン・フリーマンでなかったとすると一体誰だったのか…

続いて、41-50位、気持ち的にはこの辺りが今年の平均値みたいな感じです。

41. 追憶の森

42. グランドフィナーレ

43. クリード チャンプを継ぐ男

44. 10 クローバーフィールド・レーン

45. コップ・カー

46. マネー・ショート 華麗なる大逆転

47. ストレイト・アウタ・コンプトン

48. ボーダーライン

49. SPY/スパイ

50. ジャングル・ブック

『追憶の森』は、「自分的にこういうのは嫌いじゃない」とあらかじめ注釈を置いた上であえていうと、「ガス・ヴァン・サントと渡辺謙とマシュー・マコノヒーがそれぞれナルシスティックな自慰的志向に走って好きにやった同人誌的寄せ書き作品」みたいな感じがあります。もちろん全員、それぞれの才能の持ち主なので、コラージュ的な見方をするとやはり見事な完成度なのですが、一本の映画としてどうかというと全体を貫く強い作為の柱みたいなものがあまり感じられないのでその方面でのカタルシスに乏しいという。しかしそれを踏まえた上でも、東西の顔面俳優の両巨頭が並び立つ顔面演技の奔流には圧倒的な力があるわけで、その辺で41位まで来た、ということなのでしょう。(他人事)

『グランドフィナーレ』は別記事の方に割と思いの丈をしっかり書き留めておいたのでここでは割愛しますが、改めて今年の映画全体を振り返ってみると『帰ってきたヒトラー』と期せずして繋がる部分があったりして面白いですね。リアルタイムではスルーしてしまいましたが、あのシーンも良かった。

『クリード チャンプを継ぐ男』は実際には2015年公開作なんですが、私が観たのは今年に入ってからなので、ここで扱っています。自分の中では、今年、何本かあった「アイデンティティ」にまつわる傑作の一つなのですが、本当に今年は傑作が多くて難儀な感じです。まさか43位まで後退してくるとは…詳細は別記事の方で。(最初に書いた通り、タイトルのリンクは公式サイトまたは当ブログの該当作品についての記事に飛ぶリンクです。)

『10 クローバーフィールド・レーン』は個人的にはスマッシュヒットだった『クローバーフィールド』と同じ世界での別のシーンを描いているということで期待を抱いて観に行ったんですが、良い意味で裏切られたというか、J.J. エイブラムスの野郎にまたしてもいっぱい食わされたというか。「続編」ではなく、「同じ世界の別の物語」という回りくどい言い方をしている理由も今ならわかるんですが、完全に別ジャンルというか別テーマの作品なんですね。多くを語ることは憚られるタイプの映画なのですが、とにかく「ジョン・グッドマンが髭を剃ってきた」というあの戦慄は今後も長く語り継がれていくであろうという予感がします。

『コップ・カー』は別記事に散々書いた通りのケビン・ベーコン・ムービーであって実際のところそれ以上に語るべき言葉もないのでさらっと流すことにしますが、あのメカニカルに進行するプロットの心地よさというのは私が映画に求める価値の中でも主要なものの一つなので、本作の監督ジョン・ワッツには今後期待していきたいと思います。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』も別記事に割としっかり書いているのですが、改めて考えるとキャスト陣の丁寧な演技が光った作品でした。クリスチャン・ベールももちろんそうなんですが、スティーブ・カレルは昨年の『フォックスキャッチャー』に続いて、守備範囲をさらに貪欲に広げてきているような凄みがあります。もう一回観てもいいなぁ。

『ストレイト・アウタ・コンプトン』は『HiGH&LOW』とともに、今年の「映画との関わり方」を象徴するような作品だったりします。要するに「今までだったらそもそも観に行こうとも思っていなかったであろう作品」ということなんですが。2016年を振り返るともちろん例年になく豊作だった、ということがまず第一にあるとは思うんですが、それに対して自分もまた随分と積極的に飛び込んでいったという側面があって、それはもっというと、Twitterを軸に日本の「映画に関わる世界全体」が一種の励起状態のような状況になっていたということでもあるような気がするわけです。もちろん、あくまで自分自身についての特異的な出来事だったのかもしれませんが、例えば一連の邦画の興行収入とかを見るにつけても、割と普遍的な「社会レベルでの動き」だったのではないかと思えています。この辺も来年、継続していくのか、あるいは一時的な盛り上がりに過ぎなかったのか、興味深いところです。映画本編については、別記事の方で。

『ボーダーライン』も別記事参照ですが、とにかくベニチオ・デルトロによるベニチオ・デルトロが猛威を振るっていて、すでにシリーズ化が決定しているとのことですので今後に是非期待していきたいと思います。あとは撮影のロジャー・ディーキンス。ある意味、ハリウッドの至宝だと思うんですが、今後も末長くこういう素晴らしい絵を撮り続けてほしいものです。

『SPY/スパイ』は今年のダークホースというか、全く事前情報とかも取得せずにたまたま出会い頭に、的な出会い方をしたのでうまくハマったというか、作品自体が映画の外から仕掛けているツイストを完全に不意打ちで食らうという形になってしまったために恐らくは平均的な鑑賞者以上に楽しめたのではないかという気がします。まさに、「まさかこんな映画だとは思わなかった」的な。ということで個人的には大変面白かったわけですが、改めて考えると007シリーズが築き上げた「スパイ活劇もの」の背骨というのがいかに強靭かつふくよかなものであるか、ということもあるわけで、伝統の上にいろんな変わり種の花が咲き誇る、というのは文化として極めて正しい「あるべき姿」だなぁというようなことも思ったりします。

『ジャングル・ブック』は極めて「ディズニー的」作品で、あらゆる側面が「ディズニー」なのですが、それでも特筆すべきはすべてCGで描かれた動物たちのボイスアクターとして参加している名優陣の凄みでしょうか。特に怪しい大蛇カーを演じるスカーレット・ヨハンセンと猿の王キング・ルーイを演じるクリストファー・ウォーケンの歌はそれぞれ鳥肌ものでそのためだけにでもこの作品を観る価値があるレベルでした。エンディングのスタッフロールもそつなく見事です。

***

ここまででまだ半分に届かないということで非常に辛くなってきていますが、とりあえずもう少し頑張ります。

 

 

 

 

 

[movie] 2016年日本公開映画 個人ランキング 61−77位

去年の大晦日にこんな記事を書きました。

2015年は個人的には例年になく劇場に通った1年であると同時に、例年になく傑作の多かった1年でした。というか、異常としか言いようの無いレベルの高さで、たまたまそういう年に劇場に頻繁に通えたというのは本当に僥倖だったと思います。

本日はそれから1年後の2016年12月31日ですが、やはり全く同じことを書かざるを得ない状況だったりします。またしても、しかも2015年を超えて、かつてなく頻繁に劇場に通い、かつてないレベルで傑作に恵まれた1年でした。

この1年間に観た、日本で今年封切られた映画は合計78本。後半、色々と忙しくて失速してしまったのですが、そういう変動要因を勘案すると、この辺りが自分の最高速度ではないかという気がします。やりきった感も割とあり。

昨年来、観た映画は常にリアルタイムでランキングに組み入れるということをやっているので今年もその78本について、主観的な順位づけは終わっているので、昨年にならって一つ一つを振り返りながら、下から順に並べていきたいと思います。(以下、作品タイトルのリンクは過去記事もしくは公式ページへのリンクです。)

71-77位

71. ディーパンの闘い

72. ロブスター

73. 白鯨との戦い

74. ミラクル・ニール!

75. パディントン

76. 完全なるチェックメイト

77. Mr. ホームズ 名探偵最後の事件

71位の『ディーパンの闘い』は別記事をポストしていて言いたいことは概ねそちらでカバーしているのですが、このレベルでも71位になってしまうというのが途方も無い話です。「よかった」か「よくなかった」かで言えば、明らかに前者なんですが、比べていくとこの辺になってしまうんですねぇ。

『ロブスター』は「近未来、カップルを成立させられなかった男女はペナルティとして動物にされてしまう」というダークで奇妙な世界を舞台に主演のコリン・ファレルが眉毛と口髭から物憂げさを炸裂させているんですが、ラストシーンや劇中のベン・ウィショーのエピソード等々、「カップリング」とそれに伴う「投影」的な行為というか事象の扱いが印象深い作品でした。

『白鯨との戦い』は、ロン・ハワードにクリス・ヘムズワースという『ラッシュ/プライドと友情』をやらかしたコンビの作品で、こういうのは嫌いじゃないんですが、白鯨の方にフォーカスを当てた大傑作のポスターによって醸成された個人的な期待感がスカされた、ということも影響しての順位でしょうか。こちらは別記事ありますので、詳細はそちらで。

『ミラクル・ニール!』はサイモン・ペッグが演じる、作家としてデビューする夢を見つつもパッとしない人生を送る。パッとしない独身教師が、ある日突然、「万能の力」を授けられる、というプロットで、徹頭徹尾ブリティッシュなコメディでした。やはり人間、この手の毒も定期的に摂取していく必要があります。

『パディントン』もそういう意味では同じカテゴリの「ブリティッシュ」なやつですが、こちらは別記事ありますので割愛。一言で表すなら、歯ブラシ。

『完全なるチェックメイト』は今思い返してもなんとも「惜しい」感じの作品です。題材も役者も作品の雰囲気もことごとくストライクゾーンなんですが、最後に散らかるというか、後で考えたらストライクゾーンを通ってたそのボール、野球のボールじゃなかったな、みたいな。あと、今年はリーヴ・シュライバーの当たり年みたいな感懐があるのですが、これがその最初の一発でしたね。

『Mr. ホームズ 名探偵最後の事件』も、惜しいとしか言いようがない作品でした。イアン・マッケランで晩年のホームズ、とかいう黄金の組み合わせを見出しておきながらこの結果、ということは、ある意味驚くべき話と言ってもいいのかもしれません。

61-70位

61. グランド・イリュージョン 見破られたトリック

62. アウトバーン

63. スロウ・ウェスト

64. フィフス・ウェイブ

65. イット・フォローズ

66. ライト/オフ

67. HiGH&LOW

68. BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント

69. レッド・タートル ある島の物語

70. 帰ってきたヒトラー

『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』は、前作が個人的な大ヒットだったということでかなり期待していたんですが、その期待が高かった分、マイナスに働いた部分と、逆に前作の余勢を駆ってプラスに働いた部分があるような気がして、客観的な評価になっていない自覚はあるのですが、その辺の諸々を込みで大体このくらいの位置という感じです。ジェシー・アイゼンバーグやウディ・ハレルソンに対してダニエル・ラドクリフ、というのは素晴らしいマッチングだと思うのですが、その先に突き抜けきれなかったのが残念。あと、マーク・ラファロがハルクにならない、というのも一回やればもういいだろう、という気はします。(なりません。)

『アウトバーン』は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で一皮剥けた感のあるニコラス・ホルト主演のカーアクション映画で、映画の他のどの要素よりも先に配給側の思惑が前に出てきてる感があるのですが、助演のベン・キングズレーとアンソニー・ホプキンスが、まるで午後のティータイムを楽しむかのようなリラックスぶりで参戦しており、その辺のポイントが個人的には非常に高く効いている気がします。ニコラスの必死感、ベンとアンソニーの脱力感、そしてヒロイン、フェリシティ・ジョーンズの第三者感。この辺りのキャストの力学が楽しい作品でした。あとご当地ムービー的な側面も見逃せません。ロケ地ポイントも加算です。

『スロウ・ウェスト』は「公式サイトが見つからない」という有様なので色々とお察しなのですが、マイケル・ファスベンダーが主演・製作総指揮の西部劇ということで個人的には外すことができない感じがあります。内容もまぁ「ああ、そういう感じにしたいのね」という一歩引いた感じになってしまうのですが、あのラストの落とし方は嫌いじゃない、というのと、あとはやはりファスベンダーのガンマン姿というのがあるのでとりあえずこのくらいの順位で。

『フィフス・ウェイブ』はクロエ・グレース・モレッツ主演の「宇宙人が攻めてきたぞ!」ムービーですが、全編にただよう小学五年生感が極めて濃厚で、記憶の奥底の変な部分が発熱してくる感じの作品で妙な魅力があります。作中でも重要な役割を担う「大佐」がリーヴ・シュライバーというのがまたたまらないわけですが、こういう映画は本当に地上波でヘビーローテーションして世の中のボンクラ小学生たちの健やかな育成の一助として欲しいものだと切に思います。あとこの次の『イット・フォローズ』で主演しているマイカ・モンローが出てるんですよね。時系列ではこちらが後なんですが、この人の今後も気になります。

『イット・フォローズ』は別記事にも書いた通り、「志のある映画」でした。こういう試みが継続的に立ち上がってくるジャンルの未来は明るいなぁと思います。

『ライト/オフ』も同じく「志のあるホラー」という感じで結構よくできた作品でした。性交で「感染」し、ただただ歩いて追ってくる、というネタで撮り切った『イット・フォローズ』に対し、明かりが消えたタイミングにのみ現れる、というネタで撮り切った本作は、そのネタの突き詰め方という点では非常に素晴らしいのですが(マズルフラッシュとかブラックライトとか)、それ以外のところの「迫害された呪いの子」とか「精神病院的施設」とか「強制的な絆」とか、何というかありふれた感じのフレーバーをただ並べた感があって、その辺りが『イット・フォローズ』より一つ下、という位置付けになるのかな、という感じです。

『HiGH&LOW』は一部の人々の異常とも言える盛り上がりに引きずられる形で観に行った作品なんですが、確かに物凄い熱量を持った異常な作品でした。Twitterの方にも書きましたが、冒頭、めちゃくちゃされた街を目にした登場人物が「街がめちゃくちゃじゃねえか!」と怒りの叫びをあげるシーンからしてもう只者ではなく、しかも最後までそのままのテンションということで何というか、目を開かされたような感じです。あと、終盤の大抗争は圧倒的な物量で、それぞれちゃんと殺陣を振り付けられた数百人が画面のそこかしこで熱く激しく戦うというシーンになっており、EXILEというのは一体何百人いるんだろうといたく感心したことでした。

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』は、スティーブン・スピルバーグ、マーク・ライランスというビッグネームがまばゆく輝く作品なので、こんなのを『HiGH&LOW』より下にしてるとディズニーから刺客が差し向けられるのではないかと心配になってきますが、もちろん面白くなかったとかではないわけで、つくづく2016年の異常性が際立ちます。個人的にはマーク・ライランス演じる英語が不得手な巨人の「いいまつがい」が非常に素晴らしくて、字幕を担当された松浦美奈さんの奮闘ぶりに目頭が熱くなりました。あれを日本語字幕にしろとか悪夢だよなぁ。

『レッド・タートル ある島の物語』はスタジオ・ジブリの趣味枠というか、興行成績を気にせずにやってる感があって受け取る側も少し面食らうのですが、完成度はやはり高く、文句の付け所のない、隙のない作品です。ただまぁ観ているこっちの側がこういう、全体として一編の「作品」ですよ、みたいになっていて例えば「ストーリー」といったような個別の要素を切り出しにくい類の作品の咀嚼があまり得意ではないので、今の時点ではこの順位かなぁという感じです。もう少し歳をとれば、例えば昔より温泉が好きになったみたいに、こういう作品の相対的順位も上がるのかもしれません。

『帰ってきたヒトラー』は個人的には外せないテーマを扱っている作品で、こういう寸評ではなくちゃんと考察を交えて一本記事を書かなければいけない気がするのですが、とりあえず「映画」として見たときの順位としてはこんな感じの作品です。実験的な要素もありますし、ドキュメンタリー風味も込みで、かつハリウッド的な作劇論とは異なるドイツ映画、ということでどうしても「異色作」というカテゴリに入ってしまうので、まとめてこういうランキングに入れること自体の是非もあろうかという気がしますが、作品としての「意味」「価値」みたいな話だけであれば非常に大きなものがありますので、そこは注釈としてちゃんと書いておきたいと思います。大事な作品です。

***

というところで一旦記事を分けることにします。次は41−60位。

 

 

 

 

[camera] Lightroom/Camera RawがEOS 5D Mark IVのRAWフォーマットに対応

2016年9月20日付で、AdobeのLightroomおよびCamera RawがEOS 5D Mark IVのRAWフォーマットに対応しました。(→公式blogのアナウンス)

素晴らしいことに5D Mark IV独自のDual Pixel RAWフォーマット(DPRAW)にも対応していて、読み込み、編集とも可能です。ただし、上記アナウンス記事もあるとおり、

We do not support any specific dual pixel raw functionality.  If you are planning to use Dual Pixel raw files, please read Limitations with Canon Dual Pixel raw files in Camera Raw and Lightroom. 

ということで、DPRAWの独自フィーチャーである「解像感補正」「前ボケシフト」「ゴースト低減」についてはサポートしない、ということで、これらの機能を使う場合にはまずキヤノン純正のDigital Photo Professional (DPP)で適用した上でTIFFファイルでエクスポートしてそれをLightroomに取り込む必要があるということです。

まぁ想定内というか、これらの機能のためにLightroomに専用のUIを追加する、ということも考えにくいわけで、そりゃそうかなという感じです。FUJIFILMのフィルムシミュレーションのように特定メーカーの独自の機能に後から対応したというケースもありますが、あれはRAW現像プロファイルを選択するという既存のUIの延長で対応できたから、ということなんでしょうねぇ。

当面、DPRAWで撮るだけ撮っておいて通常はLightroomに閉じて運用、どうしても必要になった時だけDPPで加工して結果をLightroomに取り込み、という方向で行こうと思いますが、使う機会が本当にあるかどうかはちょっと微妙な気がしなくもありません。

さて、せっかくRAW現像がいつもの環境でできるようになったので、先日六本木から表参道にかけてテストに出た時の写真をもう一度引っ張り出していくつか試してみました。

まず、前回の記事でJPEGでも結構シャドウのディティールが残ってる、みたいな話をしたサンプルから。JPEGの再掲とRAWでハイライトとシャドウを救ったバージョンです。

_5d40251
straight JPEG
_5d40251-from-raw
developed by Lightroom

RAW現像側のシャドウはもっとバリバリに起こせるのですが、まぁ起こせるよ、ということが分かれば、という程度にしていますのでサムネイルレベルだとあまり違って見えないかもしれません。(ホワイトバランスも少しいじっているのと、カメラ撮って出しだとほぼ完璧に修正されているフリンジがRAWでは残っているのでそこも合わせてLightroom側で補正しています)

 

さらにLightroomからいつも使っているSilver Efex Pro 2に持っていったもの。

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EF24-70mm f/2.8L USM II (24mm), 1/40 sec at f/4.0, ISO160, edited with Silver Efex Pro 2

いつものツールが使えるようになるとひと段落というか、多少落ち着いてくるところがあるのですが、そうなると今度は本格運用に投入したくなるわけで、飽きもせずに同じようなサイクルを繰り返すことになります。

続いてTonality Proに持っていったもの。

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EF24-70mm f/2.8L USM II (24mm), 1/40 sec at f/2.8, ISO160, edited with Tonality Pro

 

こちらはいつだったかものすごい割引があった時に購入して、とりあえず持っているだけ、という状態だったのですが、色々ドライブがかかっているこのタイミングで引っ張り出してみました。できることはSilver Efex Pro2とそんなに変わらない感じですが、こちらの方が「仕上がりのイメージ」から発想した感が強く「Instagramっぽさ」がより濃厚な感じです。もちろん追い込もうという時にはしっかりと突っ込んでチューニングできる懐の深さもあるので、もしこちらに先に出会っていたらこちらを常用していたかもしれません。

 

最後に、Analog Efex Pro 2。Silver Efexと同様、ちゃんとお金を払って使っていたら開発元がGoogleに買収されて無償化されるという微妙なことになってしまったのですが、さすがにGoogleが買い取るだけあってしっかりした技術に裏打ちされたナイスなツールです。あまり使い込んでいないのでそれこそInstagramみたいになってしまいますが、そういう手遊びも適度に織り込みつつ、ちょっとカメラの話が続いたのでそろそろ映画のことも書こうと思っています。

 

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EF50mm f/1.2L USM, 1/200 sec at f/1.2, ISO100, edited by Analog Efex Pro 2

[camera][exhibition] EOS 5D Mark IV @ 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館の『トーマス・ルフ展』に行ってきました。リンク先の公式サイトによれば、

トーマス・ルフ(1958年ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ)は、アンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともにデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学んだ「ベッヒャー派」として、1990年代以降、現代の写真表現をリードしてきた存在です。

ということで、「アートとしての写真」方面にはまったく疎い私でも名前くらいは知っている大御所的な存在ですが、本展は日本で初めての本格的な回顧展として、代表的なシリーズから数点ずつ、網羅的に集めており、非常に見応えのある展示になっています。

個人的には「高度に発達した現代アートは何だかよくわからない」派なので、近年の作品群についてはうまく受け止めることも言葉にすることもできないのですが、デュッセルドルフ及びその近郊のごく普通の建造物を撮影した「Houses」シリーズや、彼の身近な人々の住む家の内部の諸々を自然光でありのままに写す「Interiors」シリーズは、本当に何気ない被写体ばかりでありながらも、奇妙に響いてくる作品がさりげなく混入していて、まさにそういう体験がしたくて写真展に来ているんだ、というそのものズバリの感動がありました。

図録も買って、二階の簡易カフェテリアみたいなところでパラパラと眺めてたんですが、やっぱりプリントと印刷では色合いが違っていて、やはり現物を見ないと分からないものがあるなぁ、と。良い悪いとはまた別の軸かとは思うんですが、今回、私が気に入った作品について言えば、プリントの方の色合いの方が明らかに好みに合っていてしっくりくるんですね。ちなみに、図録と合わせて、その作品が収録された写真集も眺めてみたんですが、そちらもやはりプリントとは少し違っていて、まぁある意味、わざわざ足を運んで実物を見に来た甲斐があった、ということで良いのかもしれません。

***

さて、今日もEOS 5D Mark IVを持ち出していて、カラーで撮っているのにモノクロっぽくなる天気の中、あわよくばEOS 5DS Rと実写比較を、と思っていたんですが、第一目的地の美術館に思わず長居してしまって時間がなかったのでそれはまた改めて。ただ、手持ちで適当に比べた感じだと、画素数の差から受ける印象ほどに、解像感には大きな違いは出ないように思えます。あとは5DS Rの方がほんの気持ちくらい、色が濃く出るかなぁ、という気もしますが、このあたりはもう少し確認しないとなんとも。とりあえず手持ちなので厳密な比較にはなりませんが(構図もピント位置もずれてる)、設定はすべて揃えてDigital Photo Professionalから素現像した写真を1組だけ。

どちらもEF24-70mm f/2.8L II USM(焦点距離50mm)で、ISO100、f/4の1/50 secで撮っています。現像時に適用したピクチャースタイルは「ディティール重視」からコントラストを-2、色の濃さを-1したものです。

(※どちらもクリックすると原寸画像が開きます)

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EOS 5DS R
_5d40439-2
EOS 5D Mark IV

 

ちゃんと比べるならやはり三脚くらいは出さないといけないんでしょうね。

[camera] EOS 5D Mark IVによるJPEGサンプル

前回のエントリに引き続き、EOS 5D Mark IVのJPEG撮って出しのサンプルです。六本木の国立新美術館から明治神宮前までぶらぶらと歩きながら撮った写真ですが、例によって個人的な嗜好によりアンダーに偏っているので、あまり「作例」などと胸を張れるものではないのですが、とりあえず。

(※以下、写真をクリックすると原寸画像が別ウィンドウで開きます。)

 

まず国立新美術館、2Fから階下のカフェスペースを見下ろしたところ。EF24-70mm f/2.8L IIの広角端で、開放です。(なので左奥の方はちゃんと写っていません)

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EF24-70mm f/2.8L II USM at 24mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO200

この日は曇っていて窓から入る光があまり強くないのですが、何となくハイライト側の描写が従来機と違っているように感じます。ちなみにピクチャースタイルは「ディティール重視」をベースに、そこからコントラストと色の濃さを1レベルずつ落としています。5DS Rと比べると画素数はかなり少なくなるのですが、実写では(ある意味当然ながら)解像度に不足は感じません。

次も同じく、国立新美術館の中で、同じくEF24-70mm f/2.8LL IIの広角端、ただし今度はf/4に絞っています。

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EF24-70mm f/2.8L II USM at 24mm, f/4, 1/60 sec, ISO100

まぁ見てのとおり露出アンダーでアレですが、実はこの撮って出しのJPEGでも結構暗部が残っていて、このまま持ち上げていくと天井面の細かい筋がしっかり見えてきます。Lightroomではまだ扱えないので未確認ではありますが、RAWファイルならもっと頑張ってくれそうな期待感があります。

続いて国立新美術館から少し歩いて表参道方面。またEF24-70mm f/2.8L IIの広角端です。ちょっと深みのある「色」がどう写るか、というテストです。

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EF24-70mm f/2.8L II USM at 24mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO160

私はデジカメ自体、キヤノンからスタートしているので刷り込み的な話もあって元々キヤノンの色が好きなんですが、そういう意味でもこのMark IVは正常進化というか、同じ血統だなぁという感じ、個人的には非常に好ましい限りです。一方、このショットには入っていませんが、キヤノンのカラーレンダリングの長短を考えた時の「短」の方にくる、木の葉の緑とかの色褪せとかくすみ感も相変わらずです。ただ、今回のオートホワイトバランスの「ホワイト優先」はちょっと試した限りでは好みに合いそうなので、もう少し模索が必要な気がしています。

さらに移動して「東急プラザ表参道原宿」のエントランス。これもEF24-70mm f/2.8L II広角端です。色々撮ろうと思って出発しても、一番最初に好きなレンズを着けていってしまうとえてしてこういうことになってしまいます。

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EF24-70mm f/2.8L II USM at 24mm, f/4, 1/30 sec, ISO160

この階段はある意味、定番スポットといってもいいんじゃないかというほどよく見かける被写体なんですが、自分で撮るのは今回が初めてだったりします。なにせ他の用事がない場所なので、多少撮ってみたいと思っていても、そのためだけに原宿方面、というのはなかなか足が向かないわけですが、こういうメジャーなポイントに限らず、もう少し頑張って出かけてみるべきなのかもしれません。

もう一枚、同じところで、今度はEF50mm f/1.2Lの開放で。

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EF50mm f/1.2L, f/1.2, 1/160 sec, ISO100

ちなみにJPEG撮って出しと言いつつ、5D Mark IVではDIGIC 6+のパワーもあって、デジタルレンズオプティマイザを始めとして、カメラ内で各種の補正がかけられるようになっています。とりあえずここでは色収差と回折の補正だけONにしているんですが(周辺減光はむしろwelcome)、一点注意が必要なのはDPRAWで撮影しているときはデジタルレンズオプティマイザはONにできない、ということでしょうか。

最後、帰る直前、地下鉄への階段を下りながらの一枚です。こちらもEF50mm f/1.2Lの開放。

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EF50mm f/1.2L, f/1.2, 1/320 sec, ISO100

この湿り気も実に好ましいんですが、3000万画素というのは、決して低画素数ということではないものの、5DSの5000万画素超というところを通過してきた今となっては、気のせいではあるんでしょうが、何というか丸まった感じがして、これもまた一つの味わいとなっている感があります。今回は一台だけ持って歩きながら撮る、ということだったので直接の比較はしていませんが、細かい描写力が活きるような被写体で同条件で撮り比べてみるのも楽しそうです。

 

ということで、他の方にとって多少なりと参考になるかどうか分かりませんが、JPEGでの街撮りのサンプルでした。

ちなみに5D Mark IVは5DS Rと比べるとメーカー公称40gも軽く、同じバッテリーで200枚余分に撮れ、GPSとWiFiまで備えてますので、散歩がてらに持ち出して街撮り、という観点では結構な優位性があります。WiFiでタブレットなりスマホなりに転送してJPEGをそのままどこかにアップする、という使い方だと、前述のカメラ内補正もかなり重要になってくるので、そうした用途がメインの方なら乗り換えは全然アリかなという気がします。

 

[camera] EOS 5D Mark IVのDPRAWによる解像感補正

EOS 5D Mark IVは、5D系としては初めてデュアルピクセルCMOSセンサーを搭載し、同じく初めて搭載されたタッチパネルとともに、ライブビュー/動画撮影時のオートフォーカスを新次元に持ち上げているのですが、さらにこのデュアルピクセルCMOSを活用して、DPRAW(デュアルピクセルRAW)という記録形式をサポートしています。

このDPRAWはセンサーの各画素からの情報をそのまま記録するRAWフォーマットに加えて、デュアルピクセルによる情報も合わせて記録するフォーマットということで、ファイルサイズもざっくり2倍程度(30MB前後→60MB前後)になるのですが、それを使うことにより、RAW現像の段階で

  • 解像感補正
  • ボケシフト
  • ゴースト低減

という3つの新しい画像調整ができるようになっています。

中でもやはり「解像感補正」というのが個人的に一番気になっていたわけですが、キヤノン公式サイトのDigital Photo Professional 4での対応の説明によれば、

解像感が低い印象の画像を改善。被写体の奥行き情報に基づいた「解像感の微調整」が可能です。スライダーで、シフト量(奥から手前)、効果の強弱を調整できます。撮り直しのできない画像の解像感を高めたいときなどに有効です。

※調整後はややノイズが増加します。

とのことで、けっこう夢が広がる記述になっています。撮影後のフォーカスシフトみたいなことができるのだとしたらそれは大変なことですが、その一方、画素1個の半分程度の差しかない差分情報でどれだけのことができるのか、ということを思うと期待はある程度絞ってかかった方がいいような気もするわけで、やはりこれは実戦投入する前にしっかり確認しておく必要があるでしょう。

 

ということで、ちょっとサンプルを撮ってきました。「石垣のクローズアップ」という面白みのない素材ではありますが、何かの参考になれば。

 

まずオリジナルの画像がこちらです(クリックすると原寸画像が開きます)。ちょっと暗くなってしまっていたのでISO800なのが残念ですが、とりあえずフォーカス部分とそこから外れていくところは分かりやすい素材かと思います。

straight-output

で、これをDigital Photo Professionalで加工してみます。DPRAWの操作はツールとして独立していて、別画面が開きます。

DPRAW Zoomed in.pngフォーカス部分を等倍拡大した状態です。この時点では無加工。ここからまずBack方向(奥)にシフトしてみます。強度はデフォルトの5。

DPRAW Adjusted Back 5.png
Digital Photo Professionalによる解像感補正: Back方向

逆にFront方向(手前)に同じく強度5でシフトしたのがこちら。

DPRAW Adjusted Front 5.png
Digital Photo Professionalによる解像感補正: Front方向

非常に微妙な違いですが、よく見ると確かに解像感が変化します。それこそ公式サイトのサンプルにあるように、「瞳とまつ毛」といったような主観的印象を大きく左右するような被写体であればそれなりに違って感じられる、ということはあるでしょう。

その一方、キヤノン自身がこの機能をフォーカスシフトとかそういう呼び方ではなく「解像感補正」と呼んでいること、特に「解像感」の「感」という文字を選んでいることには相応の意味合いがあるわけで、最初からこれを頼りにするよりは、前述の公式の解説通り「撮り直しのできない画像」について最後の手段というか「せめてもの試み」的な意味合いで使ったり、最初から95点で撮れている写真を97点、あわよくば98点にするための最終調整として利用するのが正しい使い方なのではないかと思います。

参考までに、最終的にこの補正を加えてJPEG出力したものを貼っておきます(それぞれクリックで原寸ファイルが開きます)。ビューアーとかで最初のオリジナル画像とまとめて開いてパラパラと見比べると違いがよく分かるかと思います。

Micro adjustment Back.JPG
Back方向シフト(強度5)
Micro adjustment Front.JPG
Front方向シフト(強度5)

 

この「解像感補正」含め、DPRAW独自の機能については今のところ純正のDigital Photo Profossionalのみの対応ですが、Adobeも対応するのではないかという噂もありますのでその辺りも期待して待ちたいと思います。 (そもそも本日2016/9/11時点では5D4のRAW自体、Lightroomでは扱えないのですが…)